猫の心臓病について

今回は猫の心臓病についてお話ししようと思います。
猫の心臓病にはどのような病気があるのでしょうか?
猫の心臓病にも、生まれつき心臓に異常がある先天性疾患と、成長してから発症する後天性疾患があり、日常診療で遭遇する猫の心臓病の多くは後天性心疾患です。
犬では前回お話しした僧帽弁閉鎖不全症が最も多い心臓病ですが、猫では心臓の筋肉そのものに異常が起こる「心筋症」が最も多いことが特徴です。
心筋症にはいくつかの種類があります。
肥大型心筋症:約60~70%
心臓の筋肉(心筋)が厚くなることで心臓が十分に広がれなくなり、全身へ血液を送り出しにくくなる病気です。

拘束型心筋症:約15~20%
心筋が硬くなり、心臓が広がりにくくなる病気です。左心房が大きく拡大しやすく、心不全や血栓症を起こしやすいことが知られています。
拡張型心筋症:数%未満
心筋が薄くなり、心臓の収縮力が低下する病気です。以前はタウリン欠乏が原因としてみられましたが、現在では総合栄養食の普及により発生は非常に少なくなっています。
不整脈原性右室心筋症:非常に稀
右心室を中心に異常が起こり、不整脈を生じる稀な心筋症です。
分類不能型心筋症:約10~20%
既存の分類には当てはまらない特徴を示す心筋症です。
このようにさまざまな心筋症がありますが、その中でも猫で最も多くみられるのが肥大型心筋症です。
猫の心臓病は初期では目に見える症状がほとんどありません!!
犬の心臓病では、散歩を嫌がる、疲れやすい、咳が出る、ふらつく・失神する、などの症状がみられることがあります。
一方、猫ではこれらの症状がみられることは少なく、多くの場合は普段と変わらない生活を送っています。
しかし、病気が水面下でどんどん進行してしまうと突然、
うっ血性心不全
動脈血栓塞栓症
といった重篤な状態を起こすことがあります。
うっ血性心不全とは
心臓の働きが低下し、血液の流れが滞ることで肺や胸の中に水分がたまる状態です。
猫では、胸水(胸の中に水がたまる)、肺水腫(肺に水がたまる)を起こしやすく、
呼吸が速い、苦しそう
鼻息が荒い、口を開けて呼吸する
横になれない
などの症状がみられます。

呼吸困難は命に関わる緊急疾患であり、早急な治療が必要です。
動脈血栓塞栓症とは
心臓内でできた血栓が血流に乗って全身へ流れ、血管を詰まらせる病気です。
特に多いのは後ろ足へ向かう血管が詰まるケースで、
突然後ろ足が動かなくなる
強い痛みで鳴き続ける
足先が冷たくなる
肉球の色が白っぽくなる
などの症状が突然現れます。
この病気は命に関わるだけでなく、治療後も重い後遺症が残ることがあるため、できる限り予防することが重要です。
残念ながら、聴診だけでは猫の心臓病はわかりません…
犬では僧帽弁閉鎖不全症が多く、心雑音が病気を見つける重要な手掛かりになります。
しかし、猫で多い心筋症の場合は、心雑音が聞こえないことも少なくありません。
また、一度うっ血性心不全や動脈血栓塞栓症を発症してしまうと、その後の死亡リスクは大きく上昇してしまいます。
ですので、このような重篤な症状が現れる前に心臓病を発見し、適切な管理を始めることがとても重要です。
そのためには、健康診断の一環として、特に中年齢以上の猫さんでは
心臓超音波検査
血液検査(NT-proBNPなどの心臓マーカー)
を実施することが推奨されます。
症状が出る前に見つけ、必要な治療を開始することが大切です
猫の心筋症は、症状が出てからではすでに病気が進行していることが少なくありません。
そのため、症状が現れるのを待つのではなく、症状がない段階で病気を見つけ、必要なタイミングで治療を開始することが重要です。
気になることがあればお気軽にご相談ください!
「診察で心雑音を指摘された」「高齢になってきたので心臓病が心配」など、少しでも気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
症状が出る前に病気を見つけることが、愛猫の健康を守る第一歩です。
遠藤蓮太郎





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